きっと、説明しても私1人で辿り着けないと見越して、ここの人に丸投げすることにしたんだ。
足元のキャリーケースをちらりと見る。
建物内を動き回るのに不便極まりないこの荷物とおさらばするためには、誰かに聞かないといけないらしい。
手当たり次第に探し回る……?
だけど、誰にも会えず迷子になったらそれこそ詰む。
外観から見ても、常駐する人がいるとは思えない。
従事する係りの人くらいなら、いてもおかしくないけど。
ここに突っ立っている間も、誰にも会わない。
ということは、ここにはごく少数の寮生しかいないということ。
大概、部屋に篭っているか、出かけているか。
さて、どうしよう。
通りかかるのを待とうかと悩んでいると、どこからか、いい香りが漂ってきた。