【昴side】



夏目さんを無表情で見送る姉さんをちらりと見やる。



姉さんの嘘は上手い。


けど、それを隠すのは昔から苦手だった。


だから、本当は知ってるんだ。



姉さんがそんな顔してたって、あの人たちを大事にしてるってことくらい……


俺にだって、ちゃんと分かってるんだ。




帰って来た時からそんな気はしてたし、姉さんが辛い思いをしてるんじゃないかって心配もそれで杞憂に終わったから良かった。


けど、姉さんがそんな自分の変化を受け止められない気持ちも、理解しているつもりだ。



“あんな事”があって、平静でいられるわけがない。


自然と人を拒絶してしまうのも分かる。


今も姉さんの心に深い傷として残ってるんだ、軽いものなはずがない。



だけど、それで終わりになんてして欲しくなかったから。


俺は今、心底ほっとしてるんだ。