「えぇーっ、ええやんか」



ここの寮生は案外スキンシップが多いことを自覚した方がいいと思う。


楓斗みたいに不潔なものを見たような顔で、近付くことを嫌がられるのもあんまり良い気分はしないけど。


あれは例外中の例外だ。


ちょっと、寂しい……って、思ったりするけど。



回った腕を解きながらぼんやり、そんなことを思った。



光邦との間にクーラーボックスでバリケードを張って、昴を配置して一安心。


すると今度は、ギュッ、とパーカーの裾を掴んでくる人物が一人。


ああ、またか…と一つ息を吐いた。



「空、たこ焼き食べる?」


聞けば、コクリと頷いて小さく笑みを浮かべてくれた。



……あ、どうしよう。


一瞬前の煩わしさは、今のでどこかへと吹き飛んでしまった。


光邦みたいな下心を全く感じさせない素直な空。