「…あ…っ」



気付いた時には、犯人である聖にあえなく卵焼きを奪われていた。


料理上手な聖からどんな辛辣な言葉を投げられるんだろう。


これはこれでドキドキものだ。



「うん、美味しい。味付けがちょうど良くて食べやすいよ。僕好みだ」


「…あ、ありがとう…」



今日の卵焼きはほんのり甘めの醤油味。


そっか、こういうのが聖の好みなのか。



さらりとナチュラルに述べられた聖の言葉はなんだか口説き文句みたいで少し複雑になったけど、にっこり微笑まれて、どうしていいか分からなくなる。


うう……やっぱり、この顔には勝てない……。




「えぇーっ、みんなずるいよぉ!!じゃあ僕ももーらい!」


「あ…」



あろうことか第3の魔の手が伸びた。


おかず、琉羽にまで盗られた…。



遠慮のない彼らに目線だけで抗議するけど、楽しそうに笑う彼らには効果なし。