彼が手にしたのは、お徳用の酢昆布。
いざという時の私の非常食。
それを、口をもぐもぐ動かしてゴクリ、またゴクリ。
延々と食べ続けて、お徳用がすっかり、すっからかん。
「どうぞ」
「……?」
「山椒、です」
デザートがわりに山椒を彼の手のひらに数粒。
刺激が強いから、初心者には多くはオススメしない。
「美味しいよ」
そう言う私に首を捻っていたけど、抵抗なくパクリ。
彼は静かに感想を述べた。
「……舌、なんか…変。けど……美味しい」
頭の中にポンポンと花が咲く。
グッと彼の手を両手で握りしめた。
「…っ仲間……!」
見つけた、見つけた。
一緒に食べて、仲良くお喋りしたい。
切実にそう思ったけど、あいにくそんな時間はない。