何があって突然覚醒に向かったのかは知らないけど。


その前にまず、優先されるべき問題が一つ。



「……放して、ください」



倒れてからずっと膝立ちで、下にいる彼を見下ろすこの無理な体勢は頂けない。


手を掴まれて起き上がることもできない。


とにかく体が痛かった。



「あー…ごめん」



ようやく状況を理解したらしい。


掴まれた手はあっさり放されて、私は少しだけ後ろに下がる。



そこで改めて男の子の顔をじっと見てみた。



若干垂れがちの目に、長くも短くもない自然なストレートの黒髪が白い肌にとても映えている。



イケメン、さんだ…。


素直にそう思えるほど、整った綺麗な顔をしていた。



しばしの沈黙。


見つめられ続けるのに飽きたのだろうか、欠伸まじりに声が掛けられた。