甘い香りさえ漂うかのような草原。
2人でひた走った。
追いかければ逃げる。
追いつけばつかまる。
追いつけるような速さで、
そんな繰り返し……
「もう離さないよ」
彼が私を抱きしめ囁く。
私は、私の体に蔦のように絡まる腕の中で、
静かに頷いた。
「素敵な花を見つけたよ!」
そう、私は言いながら彼に見せた。
「シロツメクサ?」
「そうよ、ホワイトクローバー」
「花言葉って知ってる?」
「これで、お花の冠作ればお姫様になれるかな?」
なんだか照れてしまって、
そんな事を言うが早く逃げる私。
繰り返される幸せな時間。
「イタッ!」
「どうした!?」
彼が私のもとへ来た時には、
その毒牙持つ奴は逃げていた。
「早く病院へ!」
大きな彼の声が草原にこだました。
「ごめんなさい……」