学校に着いて苑実に会うと、私はすぐに大蔵とのことを報告した。

「付き合った?!」

パックジュースを飲んでいた苑実は、よほど驚いたのか咳込んだ。

息が整わないまま、なんで?!といった表情を向けられる。

「だって、みあは安藤伊智が……」

そこまで言いかけて、苑実はぐっと押し黙ると、次には大きく頷いて。

「ううん、みあが自分で決めたことだもん。そっかそっか!良かったじゃん」

笑顔でそう言ってくれた。

朝から賑やかな教室。

騒がしいのはいつもだけれど、明日はいよいよ文化祭。

雰囲気の変わっていく学校に、みんなのテンションもいつもより高く見える。

教室のレイアウトを変えながら、苑実も、引退したバスケ部の先輩にクラスに遊びに来るように誘われているのだと嬉しそうに話していた。

「誰か廊下にポスター貼って来てくれる人ー?」

印刷の束を持って、教室の前からクラスメートの女の子のそんな呼びかけが聞こえて。

「あ、私、行く……」

勇気を出して手を上げてみた。

「ほんと?助かる!じゃあお願いね、みあちゃん」

友達が少ない私は、下の名前で呼ばれることなんて稀だ。

だから、”みあちゃん”と名前で呼ばれたのが嬉しくて、お腹の辺りがくすぐられるような感覚がした。

「……うん」

私は受け取ったポスターを胸に抱えて、軽い足取りで廊下に出た。