手を繋いで一緒に登校するなんて、なんだか仲の良いカップルみたいで緊張してしまう。

なんて、実際に付き合っているのだけど……。

苦手だった朝の通勤通学ラッシュに乗り込むのも、誰かと一緒だとそれほど苦痛に感じない。

けれどそれは私だけなようで。

「……この間も思ったけど、お前の時間いつもこんな多いの?」

前も後ろも右も左も、車内にはぎゅうぎゅうに人が詰め込まれて、立っているのがやっと。

それでも繋がれたままの手を見て、ドキドキと心臓の鼓動が高鳴る。

ふと窓の外に目をやると、ガラスにイチくんの姿が映った気がした。

「……っ」

反射的に手を離す私。

振り返ってもう一度確認してみると、髪型はよく似ているけどイチくんとは別人の男子学生がそこにはいて……。

イチくんに似た人を見つけたからって手を離すなんて……私、最低だ。

ちら、と大蔵の顔を見てみると、大して気にしていない様子に心の中でホッと息を吐いた。

離してしまった大蔵の手はもう吊革がしっかりと握られていて、今更手を繋ぎ直すことは出来なかった。


学校の最寄り駅に着いた頃にはぐったりとした大蔵が、駅の外に出て大きな溜め息を吐く。

「私はこれが普通なんだと思って乗ってたから……」

「いや、そうなんだろうけど」

いつもは朝練で早い電車に乗る大蔵は、ラッシュの車内に慣れていないのだと言う。

少し考えて。

「私も、大蔵と同じ時間の電車に乗ろうかな……」

そんなことを呟いた。