「あんたねえ!みあちゃんとこんなことになってんならもっと早く言いなさいよ!」

胸倉を掴む勢いで大蔵に詰め寄るお姉さん。

ばっちりとメイクしているけれど、さすがは姉弟。
睨みつける顔は大蔵にどことなく似ている。

「こうなるから言いたくなかったんだよ。つーか、バスの時間大丈夫なの?」

「はっ、もうこんな時間!?みあちゃん、今度ゆっくり家来てね」

「は、はい……」

そう言って、バス停に向かってヒールで走っていくお姉さんの後ろ姿を、私は嵐が過ぎ去った後のような思いで見つめた。

「……来なくていいから」

「ごめん。こんなことになると思ってなくて」

迎えに来たことがよっぽど迷惑だったのか、不機嫌そうに歩みを進める大蔵。

期待した顔が見られなくて、私は少しだけ残念に思いながら、その後をついて行く。

「違うから」

前を歩く大蔵は、小さくため息をついて立ち止まった。

「さっきの。姉さんがいる時は来なくていいって意味で言った」

「迎えに行ったのが迷惑だったんじゃないの?」

そう聞けば。

「そんなわけないだろ。姉さんがいたせいで喜ぶタイミング失っただけ」

そう言って、自然と指を絡められる。