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次の日の朝、いつもより少し早く家を出た。

大蔵の家がある方向を見てみると、大蔵の姿はまだ見えない。

迎えに行ったら驚くだろうか。

そんな顔が見られることを期待して、ここから数件しか離れていない大蔵の家を目指す。

ちょうど大蔵の家の前に着いた時、玄関のドアが開いた。

「たいぞ……」

名前を言いかけて、はっと息を飲む。

出てきた人も、私の顔を見て驚いた顔をしていた。

おしゃれで綺麗な私服に身を包んで、ふわふわとした茶色い髪を揺らして目の前まで来たその人は、私の顔をじーっと見つめると。

「みあちゃん?!みあちゃんでしょ」

嬉しそうに顔を綻ばせた。

たぶん、この人は大蔵のお姉さん。

たしか年は3つくらい上だった気がする。

久しぶりすぎて、記憶が曖昧だ。

あまりの勢いに、こくこくと頷くしか対応できない私の顔を嬉しそうにお姉さんがこねくり回す。

「ちょっと見ないうちに可愛くなってー!あ、小さい時も天使みたいだったけど!ひょっとして大蔵のこと迎えに来たの?って、え?!もしかしてみあちゃん大蔵と……」

「……なあ、その辺で離してやってくれる?」

いつの間に出て来たのだろうか。

止まらないお姉さんのお喋りをぴしゃりと制止させた大蔵は、これでもかというくらいに眉間に皺を寄せてこちらを見ていた。