午後の授業は、保健室でそのまま苑実と2人で過ごした。
クラスの人に聞いたのだろうか。
私と苑実、2人分の鞄を持って保健室に来た大蔵は、腫れた目を見てぎょっと驚いていた。
「みあはともかく、なんで前川までいるんだよ……」
「ちょっと、みあは良くてあたしはダメだって言いたいの?」
「だってお前その顔、妖怪かよ」
「はあ?!仮にも女の子に向かって妖怪は酷くない?」
「仮にもって、自分で言ってるし」
笑いを堪える大蔵に、苑実は頬を膨らませる。
「バツとして、途中まであたしも一緒に帰るからね」
「何でそうなんだよ」
あからさまに嫌そうな顔をして、大蔵が保健室の椅子に腰を下ろす。
その時、ガラッと扉が開いて、保健室の先生が戻ってきた。
「あら、ごめんなさい。用があって戻って来られなくて。西野くん、また突き指でもした?」
「いや、俺じゃないし」
大蔵が否定すると、先生はこちらに顔を向けて唖然とした。
「……西野くん、2人も女の子を泣かせるなんて」
「はあ?!」
それを聞いた苑実は吹き出して大爆笑。
私も鞄に顔を隠して、密かに少し笑ってしまったことは内緒だ。
大蔵の大きな溜め息が聞こえて、苑実の笑い声はしばらくおさまることはなかった。