たくさん話して、たくさん泣いた。

気付けば2人とも顔がぐちゃぐちゃになっていたらしく、盛大に鼻をかむ苑実を見てふっと頬が緩んだ。

「……みあが笑った」

ポロリ、丸められたティッシュが床に転がる。

笑った……?
私が、笑ったの……?

目の前で、ぽかんと口を開けて私を凝視している苑実。

嘘ではないらしい。

「……変じゃない?」

そう聞いてみれば。

「全っ然!可愛い!」

ずいと苑実が身を乗り出してきて、バランスを崩した私たちはそのまま一緒にベッドに倒れ込んでしまった。

驚いて顔を見合わせて、笑顔になったのはきっと同時。

「みあのお母さん、お父さんのことが大好きだったんだね」

「え……?」

2人して横になりながら、苑実がそんなことを言う。

「大好きな人に似た自分の子どもが可愛くないなんて思うはずないもん。お母さんもきっと後悔してるんじゃないのかな。自分のせいで笑えなくなったなんて、そんなの悲しいよ。あたしがお母さんだったら、大きくなったみあが笑顔で会いに来てくれる方が嬉しいもん」

深くまで沈んだままでいた心の蓋がゆっくりと開いていく。

断片的に呼び起こされるのは、遠い、過去の記憶。

『みあ、大好きよ』
『みあはお父さんとお母さんの宝物』
『みあの手は小さくて可愛いね』

ずっと思い出せなかったお母さんの笑った顔が、少しだけ思い出せたような気がした。

「……うん。私も、もしまた会えたらその時は、お母さんに笑ってほしい」

「ね、一緒でしょ?」

また涙が溢れた。

けれど、それはもう、悲しい涙ではなかった。