「ごめん。みあ、体調悪いみたいだから、あたし保健室まで付き添っってくるね」

苑実がクラスの人たちに断りを入れると、口々に私を心配してくれる声が聞こえてきた。

「え?垣谷さん大丈夫?」
「こっちはもう全然やることないから気にしないで」

くるりと振り返った苑実。

わけが分からない、といった私ににこりと謎の微笑み。

「じゃ、行こ!」

「でも私、別に体調は……」

「いいからいいから」

有無を言わさず苑実は言葉通り、私を保健室に連れて行く。

先生はいないみたいだったから、勝手にベッドを借りた。

2人で中に入って、カーテンを閉める。

「これでよし!」

満足そうな苑実だけど、体調不良でもないのになぜかベッドに横にさせられている私は全然落ち着けない。

「なんで……?」

そう聞いてみれば、苑実は急に真顔になってベッドに頬杖を付いた。

「だって、みあ泣きそうな顔してたよ?あんな顔して教室に入ったら、周りの人から色々聞かれるんじゃないかと思ってさ」

……そうだったんだ。

「そっか。ありがとう……」

「で、何があったの?」

「え?」

「何かあったから、そんな顔してるんでしょ?あたしはゆっくりみあの話聞きたいよ。でも、みあが話したくないって言うなら、何も聞かない」

「苑実……」

じわ、と喉の奥が熱くなる。

そんな風にこれまでも、何も言わずに傍にいてくれたのだろうか。
待たせていたのだろうか。

「……聞いてくれるの?」

話しても良いのだろうか。
こんなにも自分勝手で卑怯で、どうしようもない私の話を。

幻滅されるかもしれない。

でも……。

「あたしさ、みあとずっと一緒にいたけど、実はみあのこと全然知らないんだよね。だから時々不安になるんだ。みあはあたしといて楽しいのかなって。あたしは楽しいよ。みあのこと一番の友達だと思ってるし、大好きだよ。だから、ずっと待ってるね」