大蔵の誘いに、戸惑いながらも頷いてしまった私。

罪悪感を感じながら、廊下を歩く。

大きくなるといつの間にか一緒にいることが少なくなって、だけど自分の人生のどこかには必ずどこかに大蔵がいて、そのことに少なからず安心している自分がいたのかもしれない。

それに怯えて断れない私は最低だ……。

「みあ……」

どこかで名前を呼ばれた気がした。

きょろきょろと辺りを見回す。

一瞬、イチくんの姿が視界に入った気がするけれど。

「……そんなわけ、ないよね」

それにイチくんに会ったとして、こんな気持ちのまま何を話せばいいのだろう。

卑怯者の私には、イチくんと顔を合わせる資格も言葉を交わす資格もない。

切ない気持ちが心を蝕んでいく。

でも……。

……自分だけが不幸だなんて思っちゃダメだ。

泣きたい気持ちを堪えて、首を横に振る。

教室に入ろうとした時、苑実がはっとした表情をしてこちらに駆け寄ってきた。

「みあ……!もうどこ行ってたの?急に飛び出して行くから心配してたんだよ」

「ごめん、苑実……」

俯く私の顔を苑実が控えめに覗き込む。

すると苑実は私の腕を掴んで、廊下の外に引っ張り出した。

「そ、苑実?」