ガチャッ

「ただいま」

そっと、玄関に入ると、リビングの明かりがついていた

あぁ、居るのか

今日も始まってしまうのか

嫌だな

めんどくさいな


父「おぉ、帰ってきたのかぁ」

そう言うと、すぐわたしの近くまで来て

父「じゃあ、今日もやりますかぁ」

今日もまた、私は人形になるんだ

「ねぇ」

私が喋ったことに驚いたあの人が、今にも殴ってきそうな手を止めてこちらを見てくる

「これから夏。
だから見える所はやめて。」

そう言うと、納得したように

父「あぁ、そうだなぁ
お前がいらない子だなんて知られたら困る
もんなぁ?」

と、ニタニタしながら言ってくる

あぁ、そんなこと知ってるよ

言われなくても分かってる

それでも私は生きていかなくちゃいけないんだ

それから、ずっと殴られ続けた

幸いなことに本当に目立つところにはやってこなくて

それだけが救いだな

これでみんなにも誤魔化せる

あんな事を言ってしまったけど助けて欲しいなんて思っていない

ただ、ちょっとだけ気持ちを軽くしたかっただけ

ちょっとだけ逃げたくなっただけ

だから、あんな顔をさせたかった訳じゃない

私が逃げてしまったら、誰があの子たちを救うの

親の温もりを知らないまま育ってしまったあの子たち

私が、私だけでも愛情を与えてあげなきゃ。

大丈夫、私はみんなの気持ちだけで充分救われたから

これで、私はやっていける

だから、もう気にしないで。笑っていてほしい

だから私はあなた達にも嘘をつくよ