「うん、九月からだよ。だから、正直戸惑ってる」

風子は、両親の仕事の都合でずっとイギリスに住んでいた。日本に帰国したのも数えるほどしかない。
高校一年生の九月に日本に帰国したばかりだ。

そして、転校してきた初日にこの部活に入部させられることになった。

「去年、俺たちもあそこにいたんだよね〜」

チャロという黒い上着と銀の装飾がついたメキシコの衣装を着た男の子、中井幸太(なかいこうた)が懐かしそうに言った。

「幸太はたしか、居眠りしてて先生に怒られて飛び上がってたよね〜」

ベトナムの民族衣装のアオザイに身を包んだ女の子、村上真衣(むらかみまい)がクスクス笑いながら言う。真衣はこの部活の部長だ。

「ちょっと!恥ずかしいから言うのやめて!」

幸太が真っ赤な顔でそう言うと、「幸太が飛び上がった瞬間、あちこちで笑いが起こったよな」と着物を着た男の子が言う。名前は山田拓也(やまだたくや)。

「ちょっと!拓也、それ言うなって言ったばかりだろ!」

幸太が拓也に詰め寄ると、拓也はくるりと背を向け逃げ出した。

「待て〜!」

「鬼さんこちら」

ドタドタと鬼ごっこをする男子二人を、女子たちはクスクス笑いながら見ている。