「親に決められた相手と結婚する、その事実を知ったのはそのあと中学に上がってから。そこでなんだか吹っ切れちゃったの。どうせ将来の旦那さんが決まってるなら、それまでの間思う存分好きなことをして好きな人と会おうって。早凪は優しいから、莉々のわがままを受け入れてそばにいてくれた。今日までのどこかで早凪の気持ちが変わってくれたら、なんて願望もどこかにあったけど、全然ダメ」


「ダメって……」


正直、私には、早凪くんと莉々ちゃんの関係がすごく深いものしか見えていなかったから莉々ちゃんの言葉がピンとこない。


「映ってないの。早凪の瞳には、莉々が映っていない。他の誰かを見てる目だってすぐわかっちゃう。どんなに優しくされても、抱きしめても、わかっちゃうのよ。今日だって、ゆるがいなくなったことを聞いて、早凪は一目散にゆるのところに向かった。離れないようにギュッて握ってたつもりなのに、早凪はこっちを一切見ずに、走っていった。あの瞬間、莉々にとっても早凪にとっても、莉々たちは運命の相手じゃないんだって確信した」