そして上から顔を覗きこまれる。恨みのこもったような、でもそれでいて優しい眼差し。

近くで見ると本田君のお肌はとてもキメが細かくて、張りがある。サラサラの黒髪が風に揺れて、私の頬に当たった。

じっとその目を見つめていると──

「あんま見んなよ、恥ずいだろ」

そう言ってプイと顔をそらす本田君。耳まで真っ赤で、思わずふきだしてしまった。

「あは、かわいいところもあるんだね」

「かわいいって言われても嬉しくねーし」

気に食わないのか、突っ張った言い方をしてくる。子どもっぽくて、さらに笑ってしまった。

掴まれた手にギュッと力がこめられて、そういえば触れたままだったなと実感する。

本田君の手は大きくて、骨張っていて、たくましくて。女子の私のものとは、全然ちがう。

「柳内さんにだけは、かわいいとか言われたくねー」

ムッと唇を尖らせて、まだ拗ねているらしい。

冗談っぽく「機嫌直してよー!」と笑いながら、腕をブンブン振った。すると本田君は「子どもか!」と言いながら、への字だった唇をゆるめる。そして、私の手をそっと離した。

「俺、中三の夏くらいまでめちゃくちゃ身長が低かったんだ。それにこんな容姿だろ。みんなから『かわいい』って言われてさ。すっげー嫌だった」