「父ちゃんが体育会系だから、五歳の頃からやらされててさ。もう日常の一部だから、やらないと逆に体がなまって大変なんだよ。再来週試合があるから、今は体力作りのために筋トレにも力入れてる」

「へぇ、だからそんなに筋肉がついてるんだね。引き締まってて男の子らしい体つきだもんね。腹筋も割れてそう」

ストイックに自分を鍛える人は本当にすごいと思う。なにをやっても三日坊主で終わってしまう私とは大ちがいだ。

本田君は本当に野球が好きなようだ。目を輝かせながらしゃべるんだもん。

「腹筋触ってみる?」

「え、いいの?」

「柳内さんだけ、特別に」

「やったぁ!」

へんな意味はなく、単に腹筋に触ってみたかった。

「うわぁ、すごい。ほんとに割れてる! 亜子、逆三角形って初めて見た!」

すごーい!を連呼していると、本田君に笑われた。人差し指でツンツンお腹を突いていると、くすぐったそうに本田君が身をよじる。

反応が面白くて、つい何度もツンツンしてしまった。

「柳内さんって、大胆なんだかそうじゃないのか、よくわかんないよな」

「そ、そんな、大胆だなんて!」

「腹筋触って喜ぶのは、柳内さんだけだと思う」

本田君は今度はからかうように笑った。

仕返しにまたツンツンすると、本田君はビクッとなって肩を揺らす。

「俺、マジ腹弱いから」

「知らなーい、本田君がひどいこと言うからだよ」

「わ、ちょ、おい。マジやめろ」

ガシッと手を掴まれて動きを止められる。