「あいつは誰にでも優しいけど、俺の場合は好きな子限定だから」

ドキッとしてしまったのは、本田君がいきなり真顔でそんなことを言ったから。恥ずかしげもなく、サラッと言うのはやめてほしい。

そんなにまっすぐな目で見ないでよ。

恥ずかしくて、どうにかなっちゃいそう。

握りしめた拳をスカートの上でさらにきつく握る。本田君の視線には熱がこもっていて、その顔はほんのり赤い。

心臓がドキドキして、変に高鳴る。

「俺、これでも必死なんだよ。どうしたら振り向いてもらえるんだろうって」

「……っ」

そういえば私も、太陽に振り向いてほしくて必死だったなぁ。どうしたら喜んでくれるかな、興味を持ってもらえるかな、好きになってくれるかなって、そんなことばかり考えていたような気がする。

ささいなことで落ち込んだり、太陽が笑ってくれるだけで気分が上がったり、私の世界の中心は太陽だった。

「俺の好きな食べ物はうなぎで、嫌いな食べ物はチョコレートとピーマン。父ちゃんが草野球の監督をしてて、小学生の頃からずっと野球やってる。兄ちゃんと弟が一人ずついて、男三兄弟の中で育ったんだ」

なぜかいきなり自分のことを語る本田君。

「趣味は野球で、昔からずっとピッチャーしてる。兄ちゃんと弟も野球やってて、一家揃って野球好きなんだ。得意な球は変化球。毎朝五時に起きて早朝ランニングを三十分と、素振りを三十分するのが日課かな」

「ご、五時? すごいね」

それに、そんなに野球が好きだったとは。