「亜子ちゃんと会えたのか?」
教室に戻ると拓也が話しかけてきた。
「関係ないだろ」
「なんだよ、ご機嫌ななめかよ」
柄にもなく、傷ついている。
拓也の言葉を遮って、机に突っ伏した。
距離を置くってことは、別れるのと同じようなもんだよな……。
亜子が三上を好きな以上は、このまま一緒にいてもツラいだけだ。
それでもいいって思ってた。
少しでも俺のことを好きになる可能性があるかもしれないなら、なんだっていいって。
でも今はツラすぎるから、そんなことはどうやったって言えない。
いい加減諦めるためのいい機会なのかもしれない。
だけど、こんなに胸が痛くて苦しいのに、忘れることなんてできるのかよ。
カタンと椅子が引かれる音がして、全身に緊張感が走る。
チラッと顔を上げると、目の前に亜子の後ろ姿があった。
もう話しかけないほうがいいよな。
また『ごめん』とか言われても嫌だし、なにより三上とのことを亜子の口から聞きたくない。