でも……。

「ち、がう……」

なぜだか認められなくて、素直になることができない。

「いいよ、今はそれでも。それより、明日はテーマパークだね。楽しみー」

咲希はそれ以上は突っ込んで聞いてこなかった。

そのことにホッとしながら、いつの間にか話題はクラスメイトや先生のことに移っていく。

「え? あの二人って付き合ってたの? 知らなかったー!」

他人に興味がなくて、一人でいるのが好きだと思っていた咲希は意外と噂好きで。私の知らないようなことまでたくさん知っていた。

あの先輩には年上の彼女がいるらしいとか、私たちの学年の美少女が三股してるとか、聞いててビックリするようなことばかり。

「私、亜子のこと誤解してたよ」

「誤解?」

「怒らずに聞いてね。亜子のこと、一人じゃなにもできない臆病者で常に誰かに守られていないと嫌なタイプの受け身な子だと思ってた。沢井さんに嫌がらせされてもヘラヘラしてるし、解決しようとしないからじれったくて。正直、何度本田君に言ってやろうと思ったか。そうすれば一瞬で解決するのに、全然言おうとしないんだもん」

「うっ」

──グサッ

結構なことを言われてない?

「亜子はすぐに本田君に助けを求めると思ってた。でも、ちがった。亜子は自分の力で解決した。その時、強いな、すごいな、カッコいいなって思ったんだ。ヘラヘラ笑ってたのも、もしかしたらある意味強いのかもって思えて。今では弱いっていうイメージが吹き飛んだ」

「強くなんかないよー! すごいって思ってもらえる要素もひとつもないよ」

そんなに褒められたら、恥ずかしいというか。でも、嬉しい。頬がゆるんじゃうよ。

「女子のネチネチしたのが嫌いだから、誰とも当たり障りなく接して一人でいることが多かったんだけど。亜子と仲良くなるにつれて、楽しいなって思えたの。この子となら、ずっと一緒にいたいって。沢井さんのことがなかったら、きっとここまで仲良くなれてなかったよね。そう考えたら、沢井さんとのことも意味があったんだと思う。仲良くなれて嬉しいよ」

初めて聞かされる咲希の本音。

そんな嬉しいことを言われたら、感動して涙腺がゆるんじゃう。

「亜子も……っ仲良くなれてよかったって思ってる」

二人で顔を合わせて笑い合った。

涙目になっているのを見られて、さらに笑われてしまったけれど。この短い時間で、咲希との仲が深まったような気がする。

そのあとしばらくとりとめのない会話をしていると、隣からスースーという小さな寝息が聞こえ出した。

今日は朝早くから新幹線移動で、その上観光でたくさん歩いたから疲れたよね。

私も寝よう。

そう思って、目を閉じた。