「あ、亜子ね、草太といると普通じゃいられなくなるの」

その日の夜、お風呂を済ませて、あとは寝るだけとなった時、ホテルの部屋で初めて咲希に打ち明けた。

普通じゃいられなくなるって……。

言ったあと、恥ずかしくなって頭から布団をかぶる。ジタバタ足を動かすと、ベッドのスプリングがきしんだ。

だってやっぱり、修学旅行の夜といえばこういう話だよね。それに、咲希に知ってほしかった。聞いてほしかった。

誰かに言うことで自分の中にくすぶる気持ちを、はっきりさせたかったのかもしれない。

「そんなのとっくに知ってるよ。好きなんでしょ?」

「ええっ!? す、好きとか、ちがうから……!」

布団からガバッと顔を出し、咲希の顔を見つめる。

「え、ちがうの? 亜子を見てたら、てっきりそうなのかと思ったよ」

「ち、がいます」

「あからさまに目をそらしすぎだよ。ほんとにちがうの?」

「…………」

ううっ。

この胸のドキドキとか、会いたくなる気持ちとか、苦しさとか、モヤモヤとか、キュンとしたり、温かい気持ちになったり……。

草太といると色んな気持ちになる。

これは……多分、きっと。