お互いに思わずパッと手を離した。気まずくてそっぽを向く。高木君がクスッと笑ったような気がして、なんだかいたたまれない。
「へんなこと言ってんじゃねーよ、バカ拓也」
「なんだとー? でも、おまえのほうが成績いいから、なにも言い返せねー」
「そんなことはいいから、早くたこ焼き食べようよ」
「そうだな、腹減ったし。咲希ちゃんの分は、俺が出すよ」
「いえ、結構です。私、奢ってもらうのは嫌いなので」
「え? なんで?」
高木君が目を丸くする。
「他人からだと余計な気しか遣わないもん。そういうのは、彼氏とか好きな人にされるから嬉しいんだよ。高木君にされてもねぇ」
「うぐ、咲希ちゃんは相変わらず毒舌だな。素直に奢られとけばいいのに」
「誰にでもそういうことをする人は嫌なの」
「うー……冷たい」
高木君をスパッと切る咲希に、高木君はしょんぼりしている。やり取りが面白くて、笑ってしまった。
そしてたこ焼きを買う順番が私たちに回ってきた。ジューッという絶えずたこ焼きが焼ける音と油の匂い。ソースのいい香りがしてきて、お腹が鳴りそう。
「ふたつください」
店員さんにそう言って注文する草太。
さすが男子なだけあって、ふたつくらいペロッといけちゃうんだね。
「ん」
のんきにそんなことを考えていたら、受け取ったたこ焼きの容器をひとつ私に向かって差し出した。
つまようじが刺さり、湯気がのぼるたこ焼きをじっと見つめる。
えーっと……?
「奢ってやる」
「え?」
「ほら、熱いから早く」
「あ、ありがとう」
「誰にでもしてるわけじゃないから」
「あ……うん」
おずおずと両手を出してそれを受け取る。照れくさそうな横顔。目が合うと小さく笑ってくれた。
「はは、俺、カッコつけすぎ?」
「ううん! 嬉しいよ」
そのたこ焼きは、とても美味しかった。