「本田君、待って」

歩くペースが速い本田君に追いつくのは一苦労。ひと気のない公園の奥のほうまでくると、本田君はようやく足を止めた。

「迷惑、だったよな……」

「え?」

振り返っていきなりそんなことを聞くから、なんのことだかわからなかった。

「柳内さんの気持ちも知らないで、あいつがあまりにも上から目線で言うから……ムカついて」

「え、あ、さっきのこと……?」

「俺といるところを見られたのも嫌だったよな? 誤解させるようなことを言ったりしてごめん。柳内さんは、あいつのことが好きなのにな……」

元気がない様子の本田君。

南野さんが言ったように、怒っていたわけじゃないの……?

本田君はしょんぼりしているように見える。

「嬉しかったよ」

そんな本田君に笑顔を見せる。すると、本田君は首を傾げた。

「さっき、亜子といて疲れたなんて思ったことないって言ってくれたでしょ? あれ、すごく嬉しかった」

本田君は目を瞬かせながらまっすぐに私を見ている。

「太陽にね……一緒にいると疲れる。好きになりきれなかった。友達としてのほうがよかったってズバッと言われて振られたの。今思えば、たしかに亜子にも悪いところがあったんだけどさ」

その時はわからなかった。好きだったから。こっちを見てほしくて、私のことだけ考えてほしくて必死だったんだ。

だから気づかなかったよ、疲れさせていたなんて。

「それがトラウマになってて……だから、本田君がああ言ってくれて嬉しかった」

「は? あいつ、柳内さんにそんなこと言ったの?」

「うん」

「許せねーな」