入り口に目を向けると入ってきたのはお客さんではなく、零さんと幹さんだった。


「これはこれは社長。本日はいかがなさいましたか?」


厨房から店長が小走りでやって来たので、清香に少し奥の席を借りると伝え、まどかとその場を離れた。


「今の人社長って言ってたけど、すげぇ若いな」


「そうだね…。それよりまどか、さっき一緒に住もうって言ってくれたけど、私行かないから」


「は?なんで!?」


「まどか大学入ったばかりだしバイトも大変でしょ?だから負担になりたくないんだ」


「負担になんかならないよ。まゆなら大歓迎。それに俺心配なんだ。まゆ、男の家に住んでんだろ?大家のばあちゃんが嬉しそうに話してた…。まゆは俺のなのに」


泣きそうなまどかを抱き締めようとすると、後ろから腕を引っ張られた。


「まゆは君のじゃない。俺のだよ」


「れ、零さん!?」


店長と話してたはずじゃ…。


「店長に用があったのは私です。社長は三月様にお会いしたく勝手に着いてきただけですよ」


零さんの後ろで秘書モードの幹さんが説明してくれる。


まどかは幹さんの言葉で理解したのか、零さんを睨んだ。


「まどか…」


「まゆ帰るから着替えておいで」


「え!?」


帰るって、私まだ3時間ほど仕事あるんですが…。


「まゆ」


するとまどかに手を握られた。