そういえば私、起きたら幹さんに聞きたいことあったんだ。


「あの幹さん」


「なに?」


「昨日言ってた小さい頃のって何なんですか?」


「あいつ何も言わなかったんだ」


こくりと頷くと、幹さんは作業しながら話し始めた。


「零がああいう物をタッセルと認識したのは、幼稚園の頃。原因は俺の母親」


「えっと…タッセル??」


初めて聞く名前に顔を横に傾ける。


「タッセルっつーのは、カーテン纏める帯の名前。零がわかるわけねーから昨日はカーテン纏めるやつって言ったけど」


幹さん物知りだなぁと見ていると、一瞬苦い顔をして、コホンッとわざとらしく咳払いをした。


「つーか名称はいいんだよ別に。で、俺の母親昔から可愛いものが好きで、いまだに自作とかしてんだけど、実家のカーテン、全部動物のタッセルなんだよ。しかもあのリモコン立てと同じ抱きつかせる系の姿でさ。それで昔から家に来ていた零にはそれが当たり前に思ったらしく…」


今でもそれイコールタッセルとなっているんだと話してくれた。


「でも今でもそう思ってる零さん可愛いですね」


「可愛いか?もう31の男だぞ?」


「おはよう」


ガチャッと扉が開けば、スーツ姿の零さんが入ってきた。


「零さんおはようございます」


「まゆおはよう。起きたら隣にいないから驚いたよ」


「すみません。起こしたら悪いかなと思って」


ぎゅっと抱き締めてくれる零さんには悪いけど、夜部屋に戻ったのバレてないみたいで良かった…。