「おっ、できた」


再びキッチンに向かう幹さんの後ろを邪魔にならない様に着いていくと、オーブンから取り出されたクロワッサンに声が出た。


「美味しそう…」


クロワッサンの香ばしい香りにお腹が鳴りそうになる。


早く食べたいなぁと思っていると唇にクロワッサンがちょんと当たられた。


「ほらっ」


これは…食べていいってことだよね?


クロワッサンを受け取ろうと手を伸ばすと、幹さんはクロワッサンを上にひょいっと掲げた。


「え?え??」


「このまま食え」


このままって、あーんしろってこと?


「それってなんか餌付けじゃ…」


「昨日の映画の件で忘れてるかもしんねーけど、お前は社長の恋人兼秘書の犬って言っただろ。だから餌付けでいいんだよ」


すっかり忘れてた…。


「ほら、まだ準備あんだから食うならさっさと食って」


やっぱり秘書の犬っていう肩書きには納得できないけど、目の前のクロワッサンに罪はない。


いただきますと呟き、クロワッサンにかぶりつくとサクふわな食感とバターの香りに思わず幹さんの顔を見た。


「感想は?」


「サクサクふわふわでめちゃくちゃ美味しいです!!」


「なら良かった。じゃあ餌付けも終わったし、邪魔だからリビングでコーヒーでも飲んでて」


いつの間にか用意されてたコーヒーを渡され、私は大人しくリビングのソファに座った。