「申し訳ございませんお客様。当店でこのようなナンパはご遠慮下さい」


そう言うとなぜか爆笑された。なに?なんか変なこと言った??


「あー、ごめんね。そうだよな。こんなこと言ったらそう思うよな」


男の人は、俺はこれを渡したかったんだと傘を持ち上げた。


あっ!私の傘!!スーツを着てたことしか覚えてなかったから気づかなかった。今日ラフな格好だし。


「傘に名前が書いてて良かったよ。本当はすぐに返したかったんだけど、風邪で来れないと店長から聞いていたしね」


店長?あっ、もしかして店長の知り合いの人?でも傘の名前だけでここのスタッフだってわかるもの?常連さんとか??


「これはこれは社長!お疲れ様です!!」


後ろから店長の声が聞こえたかと思ったら、目の前の男の人にペコペコ頭を下げる。


しゃ…ちょ…う??


「お疲れ様です。今日はプライベートなので社長は止めて下さい。それといきなりで申し訳ないんですが、三月さんを少しお借りしてもよろしいですか?」


「まゆちゃんですか?はい大丈夫です。大切なお話でしたら、奥の席をご利用下さい」


「ありがとうございます。それじゃあ行こうか三月さん」


社長に手を引かれ、大人しく着いていくけど私の頭にはハテナマークがたくさん浮かんでいた。


「さあ、座って」


ニコニコと笑う社長と向かい合わせに座る。なんか面談受けるみたいで緊張するんだけど…。