「あ、あの…幹さん…」


手を伸ばすと、幹さんはすごい勢いで後ろに下がった。


「俺に触んじゃねぇよ!!女っ!!!」


「まゆにその言い方やめろ。ごめんねまゆ、幹がこんなんで。ほら、幹退けて。中に入れないでしょ」


幹さんは、私を睨むとどこかへ行ってしまった。


多分あれが本当の幹さんなんだろうけど、めちゃくちゃ怖かった…。


「ごめんね。幹って昔から女嫌いでさ。仕事の時は堪えられてるし、まゆは面識あるから少しは大丈夫かと思ったんだけど、やっぱりだめか…。ってこんな所にいつまでもいたってしょうがないね。部屋を案内するよ」


そして私は案内された部屋を見て、また言葉がでなかった。


「もともと来客用なんだけど、全然使ってないから好きにしていい」


テレビにベッドにソファーにと、もうこの部屋だけで生活していけるんじゃないかというくらい広々とした空間に開いた口が塞がらない。


「もし喉が乾いたらここに小さいけど冷蔵庫もあるから。今はミネラルウォーターしかないけど。電気ポットとカップはここの棚。あと、クローゼットはここね」


と淡々と説明して零さんは、少し仕事があるから部屋に戻るねと出ていってしまった。