靴のまま家に上がり、部屋の物入れから少し大きいスーツケースを取り出す。


こんなことになるなんて思いもしなかった。さっきまであんなに楽しい時間を過ごしてたのに…。


「ーっ、うぅ…」


どんどん悲しくなってきて、涙が出る。


「まゆ…」


すると、大好きな声と共に背中に暖かな温もりが伝わってきた。


泣いてちゃだめだ。零さんが心配しちゃう。


「あはは。お家水浸しになってしまいました。新しい所探さないとですね」


無理矢理笑顔を作って話すけど、零さんは辛そうな顔をする。零さんがそんな顔することないのに…。


「零さ「俺のとこにおいで」」


言葉を遮られ言われた零さんの言葉に、目を見開いた。


「俺と一緒に住もう」


「あの…でも…」


「まゆが迷惑かけられないとか考えてるなら言い方を変える。俺がまゆを家でも独占したいから俺のとこにおいで」


「いや…それでも…」


独占したいという言葉にドキッとするけど、やっぱり行きづらいよ。零さんは恋人だけど、家のことまで甘えるわけにはいかない。


俯いていると、零さんは抱きしめていた体を離し、私と向かい合わせになるように座った。