「健太…良かった…見つかって…」


「息子を保護してくださりありがとうございます」


「いえ。パパとママ見つかって良かったな」


「うん!」


健太くんは零さんの肩から下りると、お母さんに抱きついた。


早く見つかって本当に良かった。


「おねぇちゃん!おにいちゃん!バイバイ!!」


健太くんとご両親と別れ、再び館内を歩いた。


イルカショーを見て、お土産屋さんを見て、館内にあるレストランで食事をして、とても楽しい時間を過ごした。


「あっという間でしたね…」


「また何度でも来れるよ」


家までの帰り道を寂しく感じながら、健太くんにもらったオレンジキャンディを口に入れた。


どうして帰り道って、こんなに短く感じるんだろ…。


「まゆ、そんな顔しないで。帰したくなくなる」


「えっ…。そんな顔って?」


「まだ帰りたくないって顔」


「えっと…こんなに楽しい時間を過ごすのが久々で…寂しく感じたんです。あの…零さんさえ良ければ…私の家でお茶を…」


「まゆ、家の前に誰かいる」


「え!?」


アパートに着き、私の部屋を見ると少し背の低いご老人が立っていた。


あれは…大家さん?