「まゆちゃん、遅くまで本当にありがとう!上がって大丈夫だよ」


「いえ、気にしないで下さい。それじゃあ、お疲れ様でした」


調理場でパスタを茹でてる店長やホールにいるみんなに挨拶をして、休憩室へ向かった。


ふぅ…疲れた。


三月まゆ22歳。カフェレストランスワンのバイト店員。急な雨のせいで、雨宿りに来るお客さん達が一気に来て私は一時間残業になった。まぁ、お客さんが来るのはいいことだよね。


「それにしても折り畳み傘、リュックに入れっぱなしで良かった…」


さっさと私服に着替え、裏口から出ると外はどしゃ降り。大通りに出ると、雨宿りをしてる人や駅方面に急いで向かう人が目に入る。


これ以上ひどくならない内に帰ろ…。


「あいつまだか…。はぁぁ。間に合わないかもな。これじゃ…」


お店の前を歩いているとスーツを来た男の人が腕時計を見ながら、呟いていた。


この人…ずっとお店の前にいた人だ。待ち合わせ?でもなんか急いでるよね?もしかして急な雨で行けないのかな?え…どうしよう。えっと、えっと…。あっ、そうだ。


「あ、あの…」


「え?」


「何かお急ぎでしたらこの傘使ってください!あげます!そ、それじゃあ!!」


「えっ!?ちょっ!きみ!!」


うぅ…男の人と話すのってやっぱり緊張する!!だけど、少しでも私の傘、役に立ててたらいいなぁ。


そんなことを思いながら、私は家まで全力で走った。