あったかい、心地いい。

穏やかな空気の中、ほのかに香る真紘先輩の香水の香りがまた胸をときめかせる。



私は彼からもらってばかりだ。

優しさやドキドキする気持ち、明るい気持ち、変わる勇気。



こんな私が、いつか彼になにか返せることはあるのかな。

私が彼からもらった気持ちのほんの少しでも、返せる時がくるのかな。



微睡みの中、微かに聞こえてくる歌声。

まるで子守唄のように柔らかく響くその歌は、切なく優しいメロディー。

そう、あの日彼の背中で聴いた歌だ。



その歌には不思議な力があるかのように、さっきは俯き塞ぎそうになっていた胸の奥が温かくなる。

熱は胸から喉へとのぼってきて、そっと目を開けると同時に自然と涙が溢れた。



「あ、悠起き……って、え!?どうした!?」



私が起きたことに気づいた真紘先輩は、こちらを見て突然私が泣き出したことに驚く。



いきなり泣き出して、なにかと思うだろう。

だけど、涙は止まらない。あなたの歌に心揺さぶられたまま、思いはあふれる。