「つっ…」

右手の甲をよく見ると、爪が当たったのか、引っ掻き傷があった。

風が傷にしみる。


「ごっ…ごめんなさい…」

少女は頭を下げたまま、俺に謝った。


「こんぐらいなんてないさ」
少年は歯を見せて、ニカッと笑った。

横顔だけが月で見えた。

赤い髪に黒のメッシュが入った少年。

目の色が赤い。

カラーコンタクトをしているのだろう。

耳つけている少年のシルバーのピアスが月の光で反射して、やけに目立った。

見た目から、悪に見えるわ…。

少女の少年への第一印象はあまりよくはなかった。


「何してたの?」

少年が聞いても、少女は黙ったままだった。

「………」

少女は硬く口を閉ざしていた。


言いたくないのか。

俺はそう思い、話題を変えてみた。

「ねぇ、月、綺麗じゃない!?」


「うん」

少女は微笑んだ。