〈愛莉子side〉
「っ遥華!?ちょっとしっかりしてよっ!」
遥華が倒れた。
それと同時に、落ちる傘、そして濡れる私。
冷たっ。
慌てて傘を拾って自分に雨が当たらないようにする。
どうしよう。私の足はもう限界だし、そもそも道だって分からない。
ブーンブーン……
その時、静かに大きな黒い車が姿を現した。
うちのとは似てるけど違うその車は、私と遥華の前に停まると、後部座席から和人くんと暁人くんが出てきた。
た、助かった……よかった!
「2人とも、乗って!」
運転席の窓を開けてそう叫ぶのは、益子とやら。私は傘をさしながら後部座席の空いたドアに向かうと、和人くんに「乗って」と言わたので、傘を閉じて乗り込んだ。
「……あれ、暁人くんは乗らないの?」
そう言いながら後部座席のドアから外を見ると、雨に打たれて横たわる遥華と、傘も差さずに遥華を抱き抱えようとする暁人くん。
あ、遥華。忘れてた。
ていうか荷物。
「その子より荷物を早く乗せて!」
私が車の中から暁人くんにそう言うと……
「……」
反応なし。遥華をお姫様抱っこで車に乗せるところだった。
お姫様抱っこ?
使用人にそんなことしなくていいのに。