ありえねえだろおい……
「では、私の傘にお入りください」
「ええ」
……礼くらい言えよ。
私が傘を差し出すも、一向に受け取る気配がない。
……
私は傘を開くと、愛莉子と愛莉子の荷物が傘の中に入るようにさしてやった。
……さみい。
いくら私の傘が少し大きめだとはいえ、愛莉子と荷物が入れば、もう私の入る隙などない。
荷物はやけに重いし、ずっと土砂降りの雨に打たれっぱなしだし、挙げ句の果てに私は結局昨日2時間ちょっとしか寝れなかったのもあり、ぶっ倒れそうになりながら歩いていた。
やっと半分……
頑張ろうと思ったその時。
「遥華、私疲れたわ」
なんて言ってお嬢様が立ち止まってくれやがったので、まじでこいつを殴りそうになった。
いやいやいやいや。てめえ自分の荷物も傘も私に持たせてる癖して何言ってやがる。
「しかも眠いわ、おんぶして」
……さすがにこれにはカチンと来ないでもなかったが、我慢我慢。
「お嬢様、あと少しですので、頑張ってください」
あと少しじゃないけど。あと半分だけど。
モチベを下げるわけにはいかない。