……1時間後。
「できたわ、帰りましょう」
貴様、用意になんでそんなに時間かかるんだよ……
丸1時間待たされたこっちの身にもなれよ……
眠気は覚めたのか、お気に入りだというピンクのヒラヒラワンピースを着て、やけに大きなバッグを渡してきた。
もちろん、この荷物は私が持つのだ。
それを受け取る。
……重すぎね?
私が今背負っている黒いリュックの5倍はある。
こんなに何入れてきたんだよぉぉぉ。
心の中で泣きながらも顔は至って平然だというようにして、「では参りましょう」なんて言った。
「お世話になりました」
「いえいえ、また来てください」
見送りにと出てきた沙良さんに挨拶をして、外に出た。
相変わらず土砂降り。
愛莉子がやけにこちらの様子をちらちらと伺ってくる。
「は、遥華?」
「はい、なんでしょう」
愛莉子の目線の先、私の手には私の愛用する真っ黒な折りたたみ傘。
あぁ、傘を取り出したいってか。
「どこに入っていますか?」
私が大きな愛莉子の荷物を降ろしながらそう言うと、愛莉子様、
「ないわ」
なんて自信ありげに言い放ってくれやがった。
…こいつ、こんなに荷物を持っているのにもかかわらず、傘は持ってきてないってか。