そして注文を終えた後、俺は一葉ちゃんの隣に座るいよりに、ゆっくり視線を向けた。

 おどおど、そわそわしながらも、時折俺を見てくる。

 こちらが瞬きをするよりも前に目は逸らされるが、いよりは今俺のことを見てくれている。

「てか、何で濡れてるの?」

「……ちょっと、あって」

 尋ねると、ポソポソ返事が返ってきて、いよりはその細い指でグラスを握る。

「傘、持ってきてなかったわけ?」

「……ちょっと、まぁ」

 俺には、話題拒否か。