ふっと舞い降りたような感情は、体中に浸透し、俺は濡れたままの幸さんを見つめる。

「俺は大丈夫なんで、この傘、使って下さい」

 幸さんから受け取ったハンドタオルで顔だけを拭くと、後日返すと言って、幸さんが断らないうちに背を向け、俺は再び雨の中を走り出した。

 いつものように上手く話せなかったのは、好きなんだ、と初めて自覚したからだと思う。

 そっか俺、幸さんのこと、好きだったんだ。