「……これから大事な用事があるみたいだったから……濡れない方が、いいかと思って」

 人が良いのは分かっていたが、自分が濡れることを自ら引き受けるとは。

「それより篝さんは……どうして? 双川さんと会ってるんじゃ……」

 涼香から今日自分と会う話を聞いていたようで、幸さんはポカンと口を開けている。

「俺のことはいいですよ。それより、こんなに濡れて」

「……篝さんも、十分濡れてます」

 そう言うと、幸さんは胸に抱えていた鞄からハンドタオルを取り出して、おずおずと俺に手渡してきた。