「ごめんなさい、ビックリさせちゃいましたね」

「あ、いや……いきなり入ってこられたから」

「幸さんが辛そうだったから、つい、気になって」

 ただ篝さんは心配そうな表情で濡れる私に傘を返すと、再び自分のグリーンの傘を差して、こちらを見下ろす。

「あの……その……ホントのことを言うと……怖かったんです」

「もしかして、そういうお店の多い場所の近くだったから?」

「……はい。……何か、すみません」

「謝らないで、幸さんが謝ることじゃない」

 こちらこそごめんなさい、と謝る篝さんだが、篝さんが謝ってくる理由こそ何もないじゃない。