そして何を思ったのか、篝さんはその場でゆっくり自分の持った傘を畳むと、私の赤い傘に中腰になって入って来たではないか。 小さな傘に、二人きり。外は暗く、誰もいない。 間近で目が合い、一瞬だけ、時間が止まる。 しかし屈まれることによって急接近し、ドッドッと心臓の音が急激に早くなってしまい、私は後ずさって傘から出てしまった。 瞬間、雨粒が全身を濡らし、何度も瞬きを繰り返す。 い、今……すごく、ち、近くなかった……?