「だから、優香さんと仲がいいんですね？」

聞きたくないし肯定されたくもない。
だけど私はそれを聞いてしまった。
自分から聞いておきながら胸が痛む。
紅林さんは、そんな私の頭に手をポンと置いて「違うよ」と優しく言った。

「それから俺は製造課に異動願いを出した。設計課にいるのもつらかったし、製造課の仕事もやってみたいと思っていたから。心機一転、そこで俺は仕事に打ち込んだよ。仕事をすることで現実を忘れようとしていた。ほとぼりが冷めた頃、優香がやり直そうって近づいてきた。当然俺にはそんな気はもうとうない。だけど、強く断る気力もなかった。どうでもいいと思っていた。別にこの先誰とも結婚する気はないし、好きになることさえないだろうと思っていたんだ。」

そして紅林さんは私を真っ直ぐ見る。

「…なのに君が現れた。俺のことを好きだと言ってくれる人がまた現れるなんて夢にも思わなかった。」

そうですよ。
好きになってしまったんだもの。

紅林さんの凛とした顔に目が離せない。
そうだ、紅林さんは“無愛想”なんじゃない、“凛”としているんだ。
だから素敵なんだ。

「…この話を聞いても、君は俺を好きだと言ってくれるだろうか？」

長い話だった。
理解が追い付くのに時間がかかってしまう。
頭の中にたくさんの情報が交差して、必死に整理しようとしている。

だけど、私の答えは決まっているんですよ。