「不倫が明るみに出たのは相手の奥さんが証拠を掴んだからだ。俺は寝耳に水だった。…それで離婚した。」

「子供は?」

思わず口をついて出た。
だって優香さん、妊娠したんでしょ?
紅林さんとの子供、どうしたの?
思わず前のめりになっていたらしい。
紅林さんは私の肩を優しく押し戻して、きちんと座り直させられる。

「子供は俺の子じゃなくて、不倫した上司との子だったんだ。」

「えっ…。」

何だかいろいろ衝撃だ。
そんなことって、本当にあるんだ。
話を聞いている私でさえこんなに衝撃を受けているんだから、当時の紅林さんの苦悩は計り知れない。
それを思うと胸がチクチクと痛んだ。

「優香は精神的にまいってしまって、それが原因かどうかわからないけど流産した。上司は会社を辞めたけど、俺はそこまで制裁を加える気にはならなかった。だから離婚してもそのまま同期として今も同じ会社に勤めてる。」

そこまで言うと、紅林さんはふうと大きく息を吐いた。
そんな姿を見て、私は胸がいっぱいになる。