でも、そんな泉に対し、
侑月はふんわりと笑みを浮かべて頷いた。



『あたしの方こそ、お世話になってます・・・』


隣に立つ侑月が、もう一度腰を折り、泉に頭を下げた


二十二歳
俺も侑月も、まだまだ若者と称されてもおかしくない歳だけど

きちんと挨拶の出来るゆづは本当に素敵だと思った。



『ホントあんたには勿体無いわ、ゆづ先生』



『だよな』



素直にそう答えると、泉は珍しく俺ににっこりと微笑んだ。



“ドスッ”



『痛ってェ〜』



不意にみぞおちに食らう右ストレート



『あんた、ゆづ先生を泣かせたらただじゃ済まないわよ!』



空恐ろしい笑みを浮かべ、泉は俺につかみかかると

パッと手を離し、俺たちに手を振った。



『わかったわね!?

ゆづ先生、また!』



悠々と帰っていく泉を呆然と見送る俺



『結局殴られんだな』



今日は、一応バレンタインデーなのに・・・

すると



『それ・・。』



侑月が、俺の手の紙袋を指差した



『甘いの好物だったの?』



『まさか!』



ゆづが、一瞬目を丸くして次の瞬間、クスクスと笑い声を上げた



『可愛い弟なんだね』



『だといいんだけどね?』



顔を見合わせて
今度は二人でまた笑う



『食べてくれる?これ』