『柊?!どうして?!』


背後から回された腕に驚いて、あたしは後ろを振り返った



『なんで?』



どうしてこの場に柊が現れたのか全く解らない

柊は、あたしのそんな疑問には答えようともせず

あたしの隣にあった椅子を引くと、そこにどかりと腰を下ろした



『悪いけど、あんたに侑月は渡せない』



明るい蜂蜜色の髪の奥から、
鋭い目が和真を捉える



『誰なんだ?こいつは』


和真も、そんな柊の態度に触発されて、強い視線を柊へと向けた



一触即発・・・


そんな張り詰めた空気に耐えきれず、あたしは隣の柊を制すると
和真へと向き合った。



『あの日に拾われたの、あたし・・・この人に』


雨の中を泣きながら歩いた日、出会った人



『あたしね、この人が好きだって思うの

出会って間もないけど、運命っていう糸がもし存在するのなら

あたし、この人と繋がれてたいって思ってる』



考える前に口を突いて出た言葉に、和真と柊は、二人して目を丸くした。


『あんたにはお礼言わないとなのかもな』



先に口を開いたのは、固まっていたはずの柊



『あの日、あんたがゆづを捨てなかったら

今、俺のもんにはなってなかった』