「もういい。
大丈夫だよ。
手提げ袋。
そんなのいらないから。
大丈夫」
笑っているのは口だけで
千代の目も眉も
全く笑顔についてきていなかった。
「なんだよそれ・・・・・・」
心臓の周りがちりちりと燃えるような感覚がした。
「え?」
「なんでそんなに弱っちいんだよ!
嫌なら嫌って言えよ!!」
僕は散々拓海達に馬鹿にされたことで
イライラしていた。
本当は千代にこんなに
怒るほどのことでもなかったはずだけど
僕の口は勝手に千代に怒鳴りつけていた。
「あの、陽」
千代が謝る前に
僕は立ち上がって歩き始めた。
ずんずんと背を向けて進む。
1度だけ小さく
「陽・・・」
と千代が呼び止めるのが聞こえたけれど
僕は止まらなかった。