「あ~タイゾー、天井に玉井先輩の大嫌いなGが……」




 メチヤクチャ棒読みな口調で、ボソッと

 可児先輩が天井をさして言う。




「可児さん、オレ名前呼びNGだって言ったじゃないですか?」



「……で、玉井さん、Gってなんですか?」



「えっと、……ゴキ、ブリ?」




 多分……。




「ゴキブリ~? 任せてください、オレやっつけてきますから!」




 海老くんの大きな声に

 フロア中が、悲鳴を上げて

 天井を見上げる。



 アタシより

 G嫌いな女性陣がタイヘンな状況だ。



 海老くん、生方以上のおバカキャラに

 育ってくれそうだな……。



 みんなで天井を見上げて

 Gを探し始めていた。




「……可児先輩、ありがとうございます」




 みんなに聞こえないように

 アタシは、小声で言った。



 海老くんが近づいて来ないように

 してくれて助かった、けど……。



 騒然とする営業フロアを見渡して

 アタシはため息をつく。




「……でもコレ、どう収集するんですか?」



「知らなぁ~い、そのうちみんな飽きるでしょ?」




 楽しそうに、こう言って

 デスクに行こ? と言う可児先輩に頷き

 この人だけは敵に回したくないな、と

 思ってしまった。